
Asagaya, Suginami · Hiradai
平台新刊書店ひらだい/表紙を上にして積む台返せる本ほど、早く消えます。
杉並区阿佐谷、商店街の途中にある十八坪の新刊書店です。一九六二年からここで、いまは二代目がやっています。このページには、うちに本が何日いるのか、値段はなぜどこでも同じなのか、取り寄せに何日かかるのか、そして急ぐときはうちに頼まないほうがいい理由を、全部書いてあります。読みたい本が決まっている人より、先月見た本を探しに来た人のために作りました。
- 値引きはできません(どこで買っても同じ値段です)
- 先月の本が無いのは、売れたのではなく返したからです
- 取り寄せ 2〜4日/今日要るなら他店の在庫を調べます
- 買取はしていません
- 10:00–20:00(日曜・祝日は19:00まで)
About this photograph
- よその国の、よその店の店内です。うちの店内ではありません ── 背表紙はほとんどが英語で、外に見えている石積みの壁も日本のものではありません。
- 写っているのは古本屋です。中古の本は再販制度の外にあるので、あの店は一冊ごとに自分で値段を付けられます。うちは付けられません ── 同じ本屋でも、五の節に書いてあることの反対側に立っている店です。
- コミックを詰めた箱、薄いケースの列、雑誌を積んだ台 ── うちに無いものがいくつも写っています。音楽用CDは再販の六品目の一つですが、うちの棚にはありません。
- 通路に立っている方も、硝子の外を歩いている方も、うちの客ではありません。写っていることへの承諾は、こちらでは確かめていません。
- そして、屋号にした平台が一つも写っていません。代わりに平台を撮った写真を置くこともしません ── 理由はフッターに書いてあります。
Photo: John Michael Thomson / Unsplash
Where the book is
その本は、いまどこにいるか
一冊は、うちに来てから四つの面を通ります。平台に積まれ、棚で表紙を立て、背だけになり、そして取次へ返ります。日数は本の種類で決まっていて、うちの気分ではありません ── 先月見かけた本がいまどこにいるか、下で押してみてください。
Front table
一平台
表紙を上にして積んであります。うちで表紙が見えるのはここだけです。
Face-out
二面陳
棚の中で、表紙を正面に立ててあります。平台を降りた本の行き先です。
Spine-out
三棚差し
背だけになります。この店で、一冊がいちばん長くいる場所です。
Returned
四返り
取次へ返します。売れたのではありません。
Still on the shelf
面陳話題の新刊/見かけてから およそ 30 日
平台は降りました。棚の中で表紙は正面を向いているので、まだ見つかります。
三か月より前に見た本は、返している見込みです。取り寄せれば2〜4日で入ります。
入荷した日を 0 日として、この種類の本がうちにいられる日数です。 縦の線が、いま押している「見かけた日」です。
RETURN BY105日(新刊の委託)
委託で入るので、期限までは返せます。返せるということは、期限が来たら返すということです ── 返さずに置けば、その分の代金を払うことになり、十八坪の店にその余裕はありません。
日数はうちの取引条件で、業界の決まりではありません。取次によっても、版元によっても、同じ版元の中でも本によって違います。ここに書いてあるのは「うちの棚ではだいたいこうなっている」という話で、よその本屋の棚の話ではありません。
What is on the shelves
棚の中身
十八坪、棚に約11,000冊、平台は四台です。新刊はひと月に6,000点ほど出ますが、そのうちうちに入るのは150点ほど ── 入らない本のほうが、ずっと多いです。だから何を置いていないかを先に書きます。
On the shelves
置いているもの
- 文庫・新書
- 棚の三分の一。いちばん点数が多く、一点あたりの冊数はいちばん少ない棚です。
- 文芸・ノンフィクション
- 平台の二台ぶん。新聞の書評に出たものは、月曜の朝に平台へ出します。
- 児童書
- 奥の壁一面。返す日の無い棚なので、十年前の絵本もそのままあります。
- 実用書
- 料理と園芸と手芸。この街でいちばん動く棚です。
- 雑誌
- 入口の壁、約180誌。定期購読は取次を通して承ります。
- 辞書・地図
- 返す日がありません。改訂が出たときだけ入れ替えます。
Not on the shelves
置いていないもの
- 学習参考書
- 点数が多すぎて、十八坪では中途半端にしか置けません。中途半端な参考書の棚は、無いより悪いです。駅前の大きい書店にあります。
- コミックの新刊すべて
- 毎月出る点数がうちの棚に入りません。長く読まれているものを少しだけ置いています。
- CD・DVD
- 音楽用CDも再販の六品目の一つですが、うちは扱っていません。棚の余裕がありません。
- 古本
- 買取をしていないので、置くものがありません(七の節)。
棚にある本の一覧は、このページに出しません。毎日入れ替わるので、載せた時点で嘘になります。お探しの本があれば電話してください ── その場で棚と端末を見て、あるか、取れるか、何日かかるかを答えます。
Ordering in
取り寄せと、待つ日数
うちに無い本は取り寄せられます。ただし、取り寄せがいちばん良い方法とは限りません ── 急いでいるときは、まずうちに頼まないほうがいい行き先から出します。
We are the slow option
その日数なら、うちに頼まないでください
うちの取り寄せは、いちばん早くて二日、たいてい三日か四日です。今日や明日には間に合いません。そして値段はどこで買っても同じなので、待っていただく理由がありません。先に、次の四つを試してください。
Places that are not this shop
うちより早い、あるいは安い行き先
大きい書店の在庫を、こちらから調べます
今日要るなら、うちでは間に合いません。新宿や吉祥寺の大きい書店に在庫があるか、こちらから電話で確かめます。あってもうちには一円も入りませんが、値段はどこで買っても同じなので、急ぐ人がうちを選ぶ理由はありません。
図書館にあるかもしれません
杉並区の図書館は貸出の予約がネットからできます。読むだけなら、そのほうが早くて無料です。どの館にあるかは、こちらでも一緒に調べます。
電子書籍なら、いま読めます
紙より安いことも、高いこともあります(電子書籍は再販の対象ではないので、値段は自由です)。買うのではなく読む許諾を得る形なので、配信が終われば読めなくなる ── そこだけ先に言っておきます。
古本のほうが早いことがあります
品切や絶版の本は、新刊書店には入りません。古書店か古書の通販のほうが確かです。値段はその店が決めているので、定価とは関係ありません。
If you do order from us
うちで取るときの、五つの経路と日数
どの経路になるかは、注文を受けてから調べます ── 版元も、取次の在庫も、 こちらでは見るまで分かりません。下の日数は最短で、最短が普通という 意味ではありません。
取次の倉庫にある
2〜4日IN TIME
いちばん多い経路です。朝までに注文すれば、たいてい三日目の便で入ります。
取次には無いが、版元にある
7〜10日TOO SLOW
取次を経由して版元から取ります。小さい版元ほど時間がかかります。
版元と直接
2週間ほどTOO SLOW
取次と取引の無い版元(学術書、地方の小さい版元、自分で出している本)です。送料はうちが持ちます。
重版中
未定TOO SLOW
刷り直しの最中です。版元に予定を聞きますが、日付が出ないことがよくあります。予約だけ承って、入ったら電話します。
版元品切・絶版
取り寄せられませんOUT OF PRINT
うちにできることはありません。古本のほうが早く、確かです ── ただし古本は再販制度の外なので、値段はその店が決めます。定価より高いことも、安いこともあります。
取り寄せは、うちのいちばん薄い仕事です
1,500円の本を売って、うちに残るのは330円ほどです。取り寄せの送料はうちが持つので、遠い版元から一冊取れば、その一冊はほとんど残りません。それでも受けているのは、注文を受けない本屋には行く理由が無いからです。ただ、急いでいる人を待たせる理由まではありません ── 今日要るときは、先に上の四つを試してください。
前金は頂きません。入ったら電話します。取り置きは三日までで、それを過ぎたら棚に出します ── 一点につき一冊か二冊しか入れていないので、長く取っておくと、その本を探しているほかの人に渡せなくなります。
The day it goes back
返す日
棚が空くいちばん多い理由は、売れたからではありません。返したからです。取次から委託で入る本には返品の期限があって、期限までに売れなければ返します ── 返さずに置けば、その分の代金を払うことになるからです。うちが決めているのは「何を入れるか」だけで、「何日いられるか」は仕入れの条件のほうで決まっています。
週刊誌入荷 3〜8冊
週刊の雑誌。木曜と金曜に多く入ります。
雑誌の日数を決めているのは、その雑誌ではなく次の号です。次が出れば前の号は返します ── 面陳も棚差しもありません。
0306090120150180RETURN BY次の号が出た日(おおむね7日)
月刊誌入荷 2〜5冊
月刊の雑誌、季刊の雑誌。
週刊誌と同じで、次の号が出た日が終わりです。ただし一か月あるので、後半は棚の中で表紙を立てておけます。
0306090120150180RETURN BY次の号が出た日(おおむね30日)
話題の新刊入荷 1〜3冊
文芸、ノンフィクション、新書の新刊。新聞の書評やテレビに出たもの。
委託で入るので、期限までは返せます。返せるということは、期限が来たら返すということです ── 返さずに置けば、その分の代金を払うことになり、十八坪の店にその余裕はありません。
0306090120150180RETURN BY105日(新刊の委託)
文庫・新書入荷 1〜2冊
各社の文庫、新書。棚の三分の一がこれです。
点数がいちばん多く、一点あたりの冊数がいちばん少ない棚です。平台にいられるのは一週間ほどで、あとは背で並びます。
0306090120150180RETURN BY105日(新刊の委託)
実用書入荷 1冊
料理、園芸、手芸、住まい、健康の本。
急いで売れる本ではないので、長めの条件で入れています。季節のもの(園芸、おせち、年賀状)は、季節が終わった時点で期限より先に返します。
0306090120150180RETURN BY180日(長期の委託)
児童書入荷 1〜2冊
絵本、読みもの、図鑑。
絵本は、出てから十年経った本のほうがよく出ます。だから期限のある条件では入れていません ── 一年ごとに入れ替える約束で、返す日がありません。
この店で、返す日が無い棚は二つです。ここと、辞書。
→0306090120150180RETURN BY返しません(常備寄託)
辞書・事典入荷 1冊
国語辞典、漢和辞典、英和辞典、地図帳。
十年に一度しか改訂されない本です。平台には載せません ── 積んで売る本ではないからで、面陳から始めて、あとはずっと棚にいます。
→0306090120150180RETURN BY返しません(常備寄託)
専門書入荷 注文の数だけ
理工、医学、人文の専門書。ほとんどは注文で入れます。
買切なので、入れたら最後まで店のものです。だから棚には並べず、注文で入れます。ただし一度置いた本は、返す日が無いのでいちばん長くいます。
返せない本が、いちばん長く棚にいます。このページの一文(返せる本ほど、早く消えます)は、ここで裏から読めます。
→0306090120150180RETURN BY返せません(買切)
返した本は、版元の倉庫へ戻ります。読まれないまま裁断されることも あります ── うちがいちばん申し訳なく思っているのはそこで、だから 入れる冊数を増やしません。一点につき一冊か二冊なのは、売る気が 無いからではなく、返す数を増やしたくないからです。
About the price
値段のこと
本の値段は、うちが決めていません。だから、うちで買っても、駅前の大きい書店で買っても、通販で買っても、同じ値段です。小さい店のほうが高い、ということはありません。
独占禁止法 第23条第4項
本の値段は、出版社が決めています
独占禁止法は、作った側が小売の値段を縛ることを原則として禁じています。その禁止から外されている品目が六つあり ── 書籍、雑誌、新聞、レコード盤、音楽用テープ、音楽用CD ── 本はその一つです。だから出版社は定価を決めることができ、うちはその値段で売っています。所管は公正取引委員会です。
独占禁止法 第23条第4項
「法律で値引きが禁止されている」のではありません
よくそう言われますが、違います。法律は出版社に値段を決めてよいと言っているだけで、店に何かを命じてはいません。うちが値引きをしないのは、その条件で仕入れる契約をしているからです。破っても犯罪にはならず、契約の話になります。そして、うちが値引きしないほんとうの理由は原資が無いことです ── 1,500円の本で、うちに残るのは330円ほどです。
独占禁止法 第23条第4項
値段をうちが決めている本も、何冊かあります
出版社は定価を決めても決めなくてもよいので、定価に縛りのない本があります(非再販本、時限再販=一定の期間を過ぎたら自由価格になるもの)。うちの棚にも常に何冊かあって、その本の値段はうちが付けています。棚の札に「この本の値段は当店が付けています」と書いてあるのがそれです。
独占禁止法 第23条第4項
古本は、この制度の外です
中古の本に定価の縛りはありません。古書店は一冊ごとに自分で値段を付けられます ── 上の写真の店がそれです。うちは買取をしていないので(七の節)、値段を付けるという仕事がそもそもありません。
公正取引委員会
この制度は、無くなるかもしれません
公正取引委員会は、この仕組みを廃止するかどうかを何度も検討してきて、いまは当面そのままにする、という整理になっています。つまり永久のものではありません。無くなれば、うちの値段は変わります ── そのときは、この節を書き直します。
景品表示法
「定価より安い」とは書きません
うちは定価で売っているので、比べる相手の値段がありません。当店限定価格、本日限り、ポイント◯倍 ── どれも書きません。ポイントカードを作っていないのも同じ理由で、値引きに見える仕組みを別の名前で作らないためです。
値段の話をこれだけ長く書いているのは、うちが安く売れないからです。 安く売れない店が「本屋の良さ」を並べると言い訳になるので、先に 仕組みのほうを書きました。読んで、それでも駅前や通販のほうが 都合がよければ、そちらで買ってください ── 同じ本が同じ値段で 手に入ります。
Magazines
雑誌と発売日
雑誌だけは、日数の決め方がほかの本と違います。決めているのは雑誌ではなく、次の号です。
- 発売日は、店が決めていません
- 雑誌の発売日は取次の配送で決まります。東京は発売日の当日に並びますが、地方は一日から数日遅れます(地方発売日)。うちは都内なので当日の朝です。「なぜ隣の県より早いのか」と聞かれることがありますが、うちが早いのではなく、配送の順番です。
- 次の号が出た日に、前の号は返します
- 週刊誌なら七日、月刊誌なら一か月。面陳も棚差しもありません。先週号を探しに来られても、もうありません。
- 定期購読なら、必ず取っておけます
- 取次を通して承ります。部数の少ない雑誌(学術誌、専門誌、小さい文芸誌)は、これが確実です。前金は頂きません。
- 袋掛けの雑誌は、開けられません
- 付録の付いたものと袋とじのあるものは袋を掛けています。中を見てから決めたい、というのは分かりますが、開けたものは返せません ── 返せなくなった分は、うちが買い取ったことになります。立ち読みを止めているのではなく、そこだけができません。
What we cannot do
できないこと
どれも方針ではなく、理由の一覧です。理由が先にあるので、例外が作れません ── 方針なら、頼まれれば例外が作れてしまいます。
01値引きができません
出版社が定価を決めていて、うちはその条件で仕入れています(五の節)。法律が禁じているのではなく、契約です。そして原資がありません ── 1,500円の本で、うちに残るのは330円ほどです。
02ポイントカードを作りません
値引きの原資が無いので、別の名前でも同じことはできません。作れば、その分はどこかから取ることになります。
03買取をしていません
古本を買って売るには公安委員会の許可(古物商)が要ります。うちは取っていないので、持ち込まれても引き取れません。近所の古書店を紹介します。
04帯やカバーの惹句を、うちの言葉として使いません
「感動の」「全米が泣いた」は出版社の広告で、うちが読んで書いたものではありません。棚の札には、読んだ人間が読んで思ったことだけを、短く、誰が書いたかを入れて書きます。
05「泣ける」「人生が変わる」とは書きません
読んでどうなるかは、こちらには分かりません。確かめようがないことを札に書くと、その札は次からどれも読まれなくなります。
06在庫の一覧をこのページに載せません
棚は毎日入れ替わるので、載せた時点で嘘になります。電話で聞いてください ── 棚と端末を見て、あるか、取れるか、何日かかるかを答えます。
07「絶版です」と言い切りません
版元に聞かないと分かりません。品切と絶版は違い、重版がかかることもあります。分からないときは「分かりません、聞いてみます」と言います。
08サイン本や限定特典で急がせません
数に限りがあるのは本当ですが、それで今日決めさせるのは本の選び方として良くないと思っています。残りの数は、聞かれたら正直に答えます。
09取り置きは三日までです
一点につき一冊か二冊しか入れていないので、長く取っておくと、その本を探しているほかの人に渡せなくなります。
10立ち読みは止めませんが、椅子はありません
十八坪に椅子を置くと通路が塞がります。座って読める場所は、駅の反対側の図書館にあります。
From customers
お客さんから
三つとも、起きたことの記述です。どれくらい良かったかは書いていません ── 二つめは、うちが何もお売りしなかった日の話です。
先月ここで見た本が無いと言ったら、売れたのではなく返しました、と言われた。そんな説明を本屋でされたのは初めてだった。取り寄せますかと聞かれて、三日で入った。
阿佐谷北の方・50代
その日のうちに要ると言ったら、こちらから新宿の大きい書店に電話して在庫を確かめてくれた。値段は同じなのでそちらで買ってください、と言われた。結局そこで買った。
会社の帰りに寄られた方・30代
値引きはしないのかと聞いたら、しないのではなくできないのだと言われ、その理由を紙に書いて渡された。読んだら、法律が禁じているのではない、と書いてあった。
南阿佐ケ谷の方・60代
The shop
店のこと
商店街の途中、床屋と喫茶店のあいだです。地図は貼っていません ── 阿佐ケ谷駅の南口を出て、パールセンターを四分ほど歩いた左側で、看板は出ています。
- 所在
- 東京都杉並区阿佐谷南 2-14-7
- 行き方
- JR中央線・阿佐ケ谷駅 南口より徒歩4分/東京メトロ丸ノ内線 南阿佐ケ谷駅より徒歩5分
- 電話
- 03-3336-2914
- 支払
- 現金・各種クレジットカード・QR決済・図書カード
- 開業
- 1962年開業(二代目)
- 休み
- 元日と棚卸しの二日だけ休みます
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返せる本ほど、早く消えます。
返せる本には期限があるので、期限の前に返します。返せない本には 期限が無いので、売れるまで置けます ── 児童書と辞書と専門書が いちばん長くいるのは、そういう理由です。うちの棚は、好みだけで できているわけではありません。
03-3336-2914